地上に到達する太陽光線は,赤外線、可視光線、紫外線の3つの光線で構成されています。構成の割合は,紫外線が5%
可視光線が45%、赤外線が50%程度あり、それぞれの光線は異なる特性をもっています。
紫外線は物質を劣化させ、日焼け等の原因となるもので、
塗料にとっては最も警戒が必要な光線であります。
光の明るさは可視光線によるもので、可視光線が物質に当たると反射と吸収で虹の7色に見えてきます。可視光線の中で一番波長の短いものが紫色光線で、この光線より短い波長域(380nm以下)が紫外線であります。一番波長の長いものが赤色光線でそれより長い波長域(780nm以上)が赤外線であります。赤外線は熱エネルギーに変わりやすい波長で、物質に当たると反射と吸収が起こり、吸収されたエネルギーは分子運動を起こし発熱します。
塗料は可視光線を、吸収、あるいは反射する性質の顔料の組み合わせで、保護と美装を目的に色をつくり出してきました
可視光線域のすべてを反射する顔料を用いると白色に、吸収すれば黒色に見えます。濃い色ほど熱くなることは、誰もが経験していることと思いますが、可視光線の吸収は色に変化するだけで熱には変換せずに、赤外線を吸収するために熱を発することとなります。
住環境を向上させるために、遮熱塗料が多く使用されています
色彩と直接関係のない赤外線を反射、あるいは透過する性質の高い着色顔料を用いることにより、熱の発生を抑えることが可能ですが、遮熱塗料は赤外線を吸収しにくい着色顔料を用いて色彩を追求したものであります。色によっても異なりますが、
同色の一般塗料に比べて、65%~90%の赤外線の吸収を抑えることができます。その結果、塗装表面温度で10~20℃、
室内温度で約10%下がり、室内環境の向上や冷房エネルギーの節約ができます。色が濃くなるほど一般塗料との温度差は大きくなりますが、遮熱塗料に用いる特殊顔料の種類が限られるために、色には若干の制約があります。
温度上昇を抑える条件としては、汚れにくいことも必要であります。塗膜表面に汚れが付着すると、その成分が赤外線を吸収するために特殊顔料の効果は低下してしまいます。遮熱塗料は汚れにくい塗料を選んで塗装しなければなりません。
遮熱塗料は一般住宅の屋根・外壁だけではなく、工場の折板やスレート屋根などにも用いられます。特に特殊な用途では、
畜産施設などにも人気があり,使用されています。
飼料タンクに塗ることによりタンク内の温度の上昇を抑え、雑菌の増殖を防ぐ効果もあります。
また、鶏は舎内の温度が30℃を超すと、飲水量が飼料摂取量の3倍から4倍にも達し、飼料摂取量の低下、体重の低下、産卵の低下、さらに卵殻質の劣化を引き起こして、さらには37℃を超えると死んでしまうので、遮熱塗料を鶏舎の屋根に塗り、
温度上昇を抑える方法が効果的で使われています。